新しい時代の新しいあり方を求めて
日本ソーシャルワーカー協会のHPをご覧いただきありがとうございます。
日本ソーシャルワーカー協会は、1960年に国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)の後押しにより、「ソーシャルワーカーが組織する団体」として誕生、以後、日本の社会福祉制度や実践面の充実、国内におけるソーシャルワークの普及・導入に取り組むなど、大きな実績を残してきました。創立から60年間の歩みは、社会福祉六法の成立期、高度経済成長期、社会福祉の充実期、社会福祉見直しの時代から改革期など、まさに戦後日本の社会福祉・社会保障の各制度の充実期と重なる中、本協会の動きは、社会福祉制度の充実に向けられると同時に、民間団体あるいはソーシャルワークの独自の視点から、福祉従事者の資質の向上・ソーシャルワーカーの育成、あるいは制度の狭間にある生活困難や問題の掘り起こしや支援に向けられてきました。
しかし内外の情勢に目を向ける時、社会福祉改革(1990年)からの30年間だけでも、福祉の考え方や量的・人的・質的体制は大きく増加したにもかかわらず、物流や人的交流、情報通信のグローバル化、あるいは国際政治等の影響により、旧来の問題の深刻化・複雑化に加え、多様な問題が生じていることも事実です。身近では個人や家庭における様々な生活苦、金や物の偏りからくる貧困、様々な格差、世界に目を向けると、伝染病や飢餓、政治や思想等による人権侵害、国家の利権争い、紛争や大規模戦争、地球規模の自然破壊や食糧危機など、人類破滅の危機を身近に感じながら、力ない市民は、その動きに一喜一憂し、無言で犠牲を強いられる現状にあります。
私が、日本ソーシャルワーカー協会の会員でありたいと願う理由は、本協会が国際ソーシャルワーカー連盟の後押しによって誕生し、その直系かつ自由な立場で活動ができる団体として、その理念(グローバル定義)を純粋に受け入れ、その原則(倫理綱領)の遵守を誓約する団体であり、世界のソーシャルワーカーと共に、すべての人のウェルビーイングを目指す団体であるからです。
私は、戦争と支配を繰り返し、権力と国益を基本とする国家制度や政治の力だけでは「平和な社会の構築は無理であり、もはや期待できないことは歴史が証明している」と考えます。その点、独自の価値・原理・方法論を有し、決意と一定の条件さえ満たせば誰でも参加でき、困難にある人々に寄り添い、個人の内面から社会の様々な構造に働きかけ、例外のないウェルビーンイグの実現を目指すソーシャルワークこそ身近で有効かつ期待できる方法であり、現在140ヵ国300万人の会員を有し増加し続ける国際ソーシャルワーカー連盟こそ、すべての国の壁・職種・思想を超えて結集し、実際に影響力を有して活動する組織であると考えます。
物流や人的交流、IT・AIが飛躍的に進化し、しかも人類滅亡の淵にある今、問題の要因・解決策のいずれも一国内に留まらない状況を呈しています。東京と大阪が槍で戦ったことが時代遅れであるように、今や一国主義や一つ思想、一つの制度や力だけで世界・社会を席巻しよう考え自体、もはや時代遅れであることは言うまでもありません。 グローバル定義は、ソーシャルワークが、普遍的原理に基づくこと、普遍的知識や地域・民族固有の知を用いた普遍的実践であること、その目的が、問題解決や予防の域を超え、すべての人のウェルビーイングの実現にあること説いています。あらゆる国や人種、立場、思想や宗教を超えて手を取り合うことができ、個人に寄り添うことを宣言するソーシャルワークを、あらためて見直すべきであると考えます。
協会員と共に、私たちの原点である「グローバル定義」をあらためて読み直し、新しい時代という新しい器に、ソーシャルワーカーとして、どのようなあり方を取り入れるべきか、考えていきたいと思います。また、多くの方が職種・立場を超え、本協会の会員となって世界のソーシャルワーカーとつながり、共に考え行動する大きな力となっていくことを期待してやみません。
本会の活動に対する忌憚のないご意見・ご提案もお願いいたします。
会長 保良昌徳